就職ナビの凄さ
人類が採掘、精錬した金の量は一説では十万トンと推定され、このうち六万トン強が退蔵されています。
退蔵金は米国、独など各国政府、国際通貨基金(IMF)といった公的機関が約三万五千五百トンを保有し、残りの二万五千トン前後をフランス、インドなどで民間人が私的に保有しています。
西側世界の新産金量は年間千六百トン前後ですから、退蔵金はその四十倍近くにも達していて、金相場が高騰したりすると売り物として市場に出回るわけです。
逆に価格によっては公的機関や民間の投機筋、大衆が買い増したりします。
どんな商品でも在庫があって、この動向が相場のかく乱要因になったり、あるいは緩衝的な働きをしますが、金の場合はそれがケタ違いに多く、しかも潜行して動きますから、相場の先行きは極めて読みにくくなります。
自由世界の民間市場では金の供給部門が、@自由世界の鉱山生産量、A共産圏の売却量、B公的機関の売却量、Cスクラップの量―の四つに大別されます。
このうち自由世界の生産量はオーストラリア、カナダなど第三グループと呼ばれる新興国の増産によって増え、九〇年には千七百トンを超えたといわれています。
しかし九二年以降は増産が一服し、むしろ生産量は減少に向かう見通しです。
共産圏の売却の大半はソ連が占めています。
ソ連は穀物輸入などの外貨を得るためにスイスーチューリヒ市場を中心に売っていますが、金の取引は秘密保持が原則なので実態はベールに包まれています。
しかし、ソ連は売却量が多いだけに、市場はその動向に敏感に反応し、ソ連の売却は台風の目になっています。
九〇年には一定期間後の買い戻しを条件に金を一時的に売却する「金・ドルスワップ」という新たな手法を取り入れて注目を集めました。
金の主な需要部門は電子機器分野などの工業用、指輪やネックレスなどの宝飾用、そして投資用(私的保有)ですが、いずれも世界景気の動向に左右されます。
不況で購買力が低下すれば金の消費も落ち込みます。
しかし好不況以外に、個人、法人が金に投資妙味があると思えば買いが入って金の需要は増えますし、逆に金を持っていても損だと判断すれば、売りに出しますから投資需要は激しく変動し、金相場を大きく動かすことになります。
投資需要を変動させる要素として無視できないのが金利動向です。
投資資金は常に利回りの有利な対象に向かって動きます。
特に欧米では資産の運用先の選択が資産家だけでなく、大衆にも重大な関心事です。
金の場合、まず預金、国債や社債などの債券、株式が比較の対象になります。
預金や債券は金利水準と密接に関連しており、金利、特に米ドル金利の動きから目が離せません。
金利が高ければ投資資金は金融市場に集中し、下がると金市場に再び資金が還流します。
資産組み替えで話題になったのは九〇年の中東筋の金の売却です。
金の投資妙味が薄れたとみた中東筋は金を手放し、英ポンド債などを買いました。
その余波で金相場は大きく値下がりしました。
東京工業品取引所で銀の先物取引が始まったのは一九八四年一月です。
白金(プラチナ)と同時にスタートし、貴金属先物取引の一角を成していますが、どちらかといえば金、白金に隠れがちで地味な存在です。
市場規模は白金をはるかに上回るのですが、長期的な相場低迷で値動きが小さくなっていることなどが影響しているようです。
ニューヨーク相場が指標 国際的な指標となっているのは、ニューヨークーコメックス(商品取引所)の先物相場です。
東京工業品取引所の銀相場もその影響を強く受けています。
コメックス相場に輸送料、保険料などを加えた価格が基本的には商社、大手地金商などの大口販売価格となります。
銀が最も注目されたのは、八〇年ごろに米国の石油王、ハント一族が買い占めに走った時ですが、それ以降は「病める貴金属」「銀は貴金属ではない」などといわれるほど相場は低迷しています。
九〇年後半からはIトロイーオンス=四ドル前後で推移しており、過去最高値の十分の一以下になってしまいました。
銀の最大の産出国はメキシコで年間約二千三百トンを産出しています。
二番目が米国の約二千トン、三番目がペルーの約千八百トン(いずれも九〇年推定)ですが、南米の債務国が主要産出国である点に特徴があります。
メキシコ、ペルーは外貨繰りが厳しく、外貨獲得のために銀の増産に走りがちです。
相場が低迷してもなかなか増産ピッチは鈍らず、供給過剰のI因になっています。
もう一つ無視できないのが、銅、鉛、亜鉛の副産物として発生する銀の急増です。
ベースメタルの相場が高値になるとベースメタルが増産され、連動して副産物の銀の産出量も増えてしまうのです。
副産物ですから生産コストは極めて低く、「鉱山会社は値が付けば十分」とさえいわれています。
銀には価格変動による供給調整機能がなくなっているといえます。
需要は写盲″フイルムが中心 銀の主な需要分野は写真フィルムであり、全体の六〇パーセント前後を占めています。
このほかには電気接点や銀、装飾品などに使われます。
金、白金と大きく異なる点は投資需要がほとんどないことです。
価格の安い銀の地金を保有する意味はほとんどありません。
生産者団体などが需要喚起に躍起になっていますが、全般的に需要は伸び悩んでいます。
先進国で産業廃棄物対策として銀の回収システムが確立していることも、伸び悩みの一因といわれています。
写真フィルムの市場規模が拡大すれば銀の消費は当然増えるのですが、回収量も増えてしまうので、新規需要が限られてしまうのです。
南米の債務国が増産に走り、先進国の需要家は安値の恩恵を受けるI。
銀相場は南北問題の縮図ともいえるでしょう。
貴金属のなかでは投資対象として認識されるのが最も遅かったのが白金です。
プラチナの日本語訳ですが、「ホワイトゴールド」という金の合金と混同されやすく、白金という言葉を使っているのは東京工業品取引所の先物取引だけで、業界ではプラチナの呼称が定着しています。
日本では一九八四年一月に東工取で先物取引が始まりました。
当初は取組高、出来高も伸び悩んでいたのですが、日本でプラチナブームが起き東京相場が独歩高になったのに目を付けた大手商社が裁定取引(サヤ取り)を拡大、急速に先物取引が拡大しました。
いまでは束工取がニューヨーク・マーカーンタイル取引所(NYMEX)の白金相場をリードしており、NYMEX相場は日本勢の動向に左右されています。
九〇年秋の急落、そして湾岸戦争が終結した九一年二月末からの急反発は、日本の個人投資家が発信源になりました。
束工取の白金相場がこれほど成長したのは、日本が世界の消費量の半分近くを占める「白金大国」だったことが見逃せません。
自動車の排ガス処理の触媒用需要ばかりでなく、エングージリングなど装飾用需要が大きいのが日本市場の特徴です。
白金の装飾需要は日本独特で、金では派手過ぎると感じる向きでも白金の輝きはほどよく感じるようです。
また商社ばかりでなく、加工メーカーなどのリスターヘッジ(危険回避)のニーズが大きく、先物取引への参加に積極的でした。
金に比べて市場規模が小さく、その分値動きも荒いため個人投資家の資金も急激に入り込んでいます。
西側世界の白金の産出量は九〇年で九十四トンと推定され、このうち南アフリカ共和国が約九〇パーセントを占めています。
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